海外で日本のSIMで緊急通報するなら日本の番号で発信すべし。110,119番には裏番号がある。

福田です。結構前の話なのですが、情報通信技術委員会のサイトを見ていて「緊急通報用電気通信番号の取り扱いに関する調査報告書」というPDFを見つけました。面白半分で読んでみたのですが、なかなかに興味深い事実をいくつも発見しましたのでブログ記事として残させていただきます。
さらに、海外で日本のSIMを使って緊急通報するときに困らないためのコツも書いています。

                       

(引用するため、PDFコピー制限は解除しています。)

結論

固定電話でかける場合はその国の番号を使ってください。
携帯を日本のSIMで(例えばアメリカ放題)利用する場合は素直に112・911が使える国だったら112・911で発信しましょう。使えない国だったら日本の緊急番号で発信しちゃいましょう。わからなければ両方試しましょう。それが手っ取り早いようです。
逆に、海外から日本に来た人が海外のSIMで通信していて、日本の緊急機関に携帯から通報する場合は海外の(そのSIMの国の)緊急通報の番号で電話するようにしましょう。もし、110番などが救急(スリランカなど)として設定されている国の場合は、186をつけて110番するようにしましょう。その場合はロック画面から通報できないので要注意です。
110番や119番には050-6868-0000みたいな裏番号がありますが、110番を経由しないと受付してくれないのでIP電話では使えないです。

以下は長ったらしい110番、119番などの緊急通報に関わる電話の技術系に関する話です。

110番や119番には0AB-J番号が付与されていた!

(※0AB-J番号とは、050-6868-0000のように0AB-CDEF-GHJ(K)の番号、つまり市外局番付きの外線番号を指します。Iを使わないのは「1」と紛らわしいからです。ちなみに、119や189などは1XY特番と言います。以降は具体例を出しにくい場合などにこの用語を使用させていただきます。)

この事実はPDFの6ページにあります。

– 緊急機関へ接続する接続番号は、「0AB-J」番号を設定する。
– 緊急通報の場合、発信者が「一般発ユーザ」であっても、ネットワーク内で優先的な取扱いを行うため、発ユーザ種別を「優先発ユーザ」に書き換える。
– 緊急通報番号を0AB-J番号へ変換したことを示す「緊急通報呼表示」を設定する。本情報が設定されない0AB-J番号での緊急機関への着信は、許容されない(欠番)。

ちょっとわかりにくいのですが、素人なりに噛み砕いて解釈してみると

  • 電話をかけた時点では119番などで交換機に伝わる
  • 交換機で119番などが0AB-J番号に変換される
  • 0AB-J番号に変換すると同時に緊急通報フラグを立てる
  • さらに原則混雑時でも回線が接続しやすいよう優先フラグも交換機で立てる
  • 119番などの裏番号は欠番

と言うことがわかります。
ちなみに混雑時でも繋がりやすい回線は私がわかる範囲では災害時優先電話に書いてある次の回線です。

法令に定める通信を行うための必要最低限の回線数が、防災関係機関等(中央省庁と都道府県庁・市役所・町村役場、気象台、水防団、消防本部と消防署、警察、自衛隊、電力会社、ガス会社、公営企業、新聞社、放送局)に指定される。

です。つまりこれ以外の回線でも、これ相当の優先度がセットされるということになります。
これを私が最初読んだ時はIP電話でも110番に準ずることがとかできるのではないか、と思いましたが、欠番ということで残念ながら使えないことがわかりました。しかし、今後私が携帯のGPSをベースにしたIP電話でも各機関の電話番号を調べることなく緊急通報ができるAsteriskの設定を公開する予定でいますのでご期待ください。

まとめると、

  • 緊急通報フラグOn,優先扱いOffは0AB-Jでも着信可能
  • どちらのフラグもOnは当然OK
  • それ以外はNG

ということになります。

SIMカードでも緊急通報の番号が通知されていた!

SIMカードにも緊急通報の番号が入っていることがわかりました。
同PDFの7ページにあります。

携帯電話端末は、端末に挿入される USIMカード内に緊急通報番号(Emergency Call Code)及び緊急呼種別(Emergency Service Category)が登録されており、USIMカード内の登録内容とダイヤルされた番号が一致した場合に緊急通報であることを認識する。
– 「112」「911」番号は、USIM カードに登録されていなくても、発信時に端末において緊急通報番号であると認識される。ただし、この場合、「緊急呼種別」は指定されない。
緊急通報用起動信号は、ダイヤルされた番号が設定されず、「緊急呼種別」により接続先緊急機関を指定する。

PDFを読んだ限りでは、USIMカードの少なくとも数字に関する部分では16進数を用いていることがわかりました。また、緊急番号に関しては左詰めで6桁まで設定可能だそうです。日本は3桁なので、最後の3桁は穴埋めとしてFが設定されるようです。そして、各番号には警察、消防、救急、そして海上保安という4カテゴリを設定できるようです。複数設定もできることを確認しました。フラグを受信した基地局はあとは固定電話と同じように電話番号に変換してフラグを立てて電話するようです。

ここでふと思ったのが日本で112や911にかけた場合、また携帯などを改ざんして一般の電話番号を緊急呼フラグOnで発信した場合、及び110番などに対して「消防」カテゴリをセットしたSIMの場合どうなるのか、さらに110番などが緊急番号としてSIMに登録されていなかった場合、ですが次の通りとなっているようです。
まずはその国では誤った関連付けがSIMで行われていた場合。

日本の警察機関へ接続する番号である「110」が自国において消防機関へ接続する番号である場合、USIMカード内に「110」が消防機関への接続である旨が登録されている。この場合、携帯電話端末は、ダイヤル番号を含まない緊急通報用起動信号により、「緊急呼種別:消防」を指定した接続を要求し、消防へ接続される。

これは携帯では電話番号を入れず直接接続してもらうという弱点から来ているものですね。
また911などを日本で発信した場合。

日本の警察機関へ接続する番号である「110」について、自国の緊急通報番号「110」に係る「緊急呼種別」が日本と異なる場合(例えば「緊急呼種別:なし」(総合受付)の場合)、接続する緊急機関を特定できない。

そしてフラグが立たず携帯端末がそのまま110番を電話網にかけてしまった場合。

ダイヤル番号を含む通常の起動信号により、ネットワークを起動する。“184”または、“186”が付与された場合は、ダイヤルされた番号をネットワークにそのまま通知するため、携帯電話端末で緊急通報番号と認識させないことにより、ダイヤル番号を含む通常の起動信号により、ネットワークを起動する。

つまり普通の携帯でも「184119」などとするとSIMにある番号とマッチせずに普通に電話番号を乗っけて発信するようです。固定電話と同じですね。お分かりの通り、184や186をセットして119番などを発信する場合、緊急番号扱いされないとのことなので、従ってiPhoneやAndroidにある、ロック画面でも使える緊急通報は使用できないということになります。これが日本に来た外国人が唯一確実に繋ぎたい機関につなぐ方法となっているようです。

このことからわかることは次の通りです。

  • 改造して普通の電話番号を緊急通報フラグを立ててやってもその電話番号は無視される=問答無用で設定されたフラグに該当する緊急機関につながる
  • 例えば110番に消防が設定されていた場合は消防に接続される。やっぱり電話番号は無視される
  • 112や911にかけても種別フラグが原則立たないので日本ではつなぐことができない
  • 一応緊急フラグが指定されず特番が入った接続要求が来てもつながる(ただし緊急通報画面は使えない)

やる気になれば000000とかにも警察をセットしたりすることもできるということですね。わかります。

日本で112,911などをかけて来た人に対する対策

一部のキャリアではガイダンスや自動音声応答で判別する機能を提供しているようです(知っている限りではドコモ)。
さらにSIMにはMobile Country Codeという3桁のものが設定されており、将来的にはこれによってそれらのガイダンスを多言語化することもできるようになるようです。

まとめ

最初でも言及していますが、「裏番号があるなら、最初はIP電話でもかけられるかも!?」から始まったこの記事、書いているうちに主題が脱線していってしまいました。
でも、非常に興味深い報告書なのでご興味のある方もない方も是非一読されることをお勧めします。
あと著作権的には主従の関係とか引用の割合がかなり危ない感じですが一応セーフ…?
緊急通報用電気通信番号の取り扱いに関する調査報告書

この記事は最終編集から一年以上経過しております。この記事に書かれた内容をご利用・実践される際は十分ご注意ください。

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